【相続税対策】一般社団法人の相続税回避、小規模宅地等の相続税回避に防止策 税のお役立ち情報

 

2018年度税制改正において、一般社団法人の設立を利用した過度な節税にメスが入ります。

社団法人の節税とは、社団法人は企業の株式に当たる持ち分が存在しないことから、相続税がかからない制度を利用したものです。

(例えば、親が代表者となって社団法人を設立し、資産を移した後、子どもを代表者に就かせ、法人の支配権を継承すると、資産には相続税がかからず、非課税で資産を相続できることになります。)

 

また、相続税の小規模宅地等の特例の適用要件も2018年度税制改正において厳格化されます。

この特例は、事業用・居住用宅地等の相続税の課税価格を8割又は5割減額して相続人の事業や居住の継続等への配慮を目的に創設された制度ですが、その特例適用後短期間での譲渡が多数あったことから政策目的に沿ったものとなっていないケースがあるとして、その見直しがされました。


それぞれの改正ポイントは、下記の通りとなっています。

 

一般社団法人の設立を利用した過度な節税の防止策

税制改正大綱によると、節税封じ策として、

まず、個人から一般社団法人又は一般財団法人に対して財産の贈与等があった場合の贈与税等の課税については、役員等に占める親族等の割合が3分の1以下である旨の定款の定めがあることなど、贈与税等の負担が不当に減少する結果とならないものとされる現行の要件のうち、いずれかを満たさない場合に贈与税等が課税されることとし、規定を明確化します。

次に、特定の一般社団法人等に対する相続税の課税として、「特定一般社団法人等(*1)の役員(理事に限り、相続開始前5年以内のいずれかの時に役員だった者を含む)が死亡した場合には、その特定一般社団法人等が、その純資産価額をその死亡時における同族役員(被相続人を含む)の数で除して計算した金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、その特定一般社団法人等に相続税を課税することとします。

つまりは、現行は相続税がかからない社団法人について、親族が代表者を継いだ場合は非課税の対象とみなさず、社団法人に相続税を課税するように見直すことになります。

この改正は、2018年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用されます。

ただし、同日前に設立された一般社団法人等については、2021年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用されます。

一般社団法人の設立を利用した税務スキームの方は、税制改正されるとどうにもならないものでしたので、そもそも手を出すべきものではなかったものです。

個人から一般社団に資産を移す際の譲渡所得課税が無駄になますし、一回移せば今後は相続税はかからないというコンサルタントの口車に乗せられて、借金して資産を移しているケースも聞いておりました。

このケースに限らずこのような無責任な提案をし膨大な報酬をいただいている悪徳コンサルティングは少なからず拝見しますので、納税者の方々は気を付けていただければと思います。

(*1)「特定一般社団法人等」とは、(1)相続開始の直前における同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1超、(2)相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1超の期間の合計が3年以上、とのいずれかの要件を満たす一般社団法人等をいう。また、「同族役員」とは、一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他その被相続人と特殊の関係がある者をいう。

 

節税策を封じるため小規模宅地等の特例を厳格化

2018年度税制改正大綱によると、相続税の小規模宅地等の特例について、持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、

(1)相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者、

(2)相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者、

を除外することとなりました。

これは、相続開始前3年以内に持ち家に居住していない相続人、いわゆる“家なき子”の節税策に対応したものといえます。(例えば、相続人となる者が自分の子などの親族に自己の持ち家を売却し、自分は借家や社宅などに居住して“家なき子”となり、そうした状態から3年経過後に相続が開始して、相続税の小規模宅地等の特例を適用して80%の評価減を受けて相続税の負担を軽くするといった節税策を封じます。

また、貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等を除外します。

これは、被相続人の生前に、現金を一時的に不動産に変換しておくことで貸付事業用宅地として特例の適用を受けて評価額の5割を減額する節税策を封じることが狙いです。

ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている場合は除かれますが、一律3年以内の縛りで50%減額が受けられなくなります。

これらの改正は、2018年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税から適用します。

ただし、同日前から貸付事業の用に供されている宅地等については適用しないこととされます。

 

(2021年7月2日)noteにて、アップグレード解説記事を掲載

noteにて、本記事に対するアップグレード解説記事を書いています。

一般社団法人の設立を利用した過度な節税の防止策についてさらに深堀して突き詰めているので、是非ともnoteの記事も一読いただきたい。

一般社団法人を使った相続税対策スキームはオワコンになってしまったのか?

 

 

【お約束事項】

本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。

当サイトのコンテンツの正確性の確保に努めてはおりますが、提供している情報に関して、いかなる保証もするものではありません。

当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。