【小売業直撃】自社ポイントは軽減税率と収益認識基準国税庁見解の両方影響! 税のお役立ち情報

 

≪自社ポイントの使用は消費税法上の値引き≫収益認識会計基準の適用の有無に関係なく全企業に適用軽減税率制度導入に伴うレシート表記への対応が必要

自社ポイントの使用は消費税法上の“値引き”に当たるとの見解が、昨年5月、国税庁から示されました。

これは、従来からの考え方を変えるものではないといいいます。しかし、現行のPOSレジは、自社ポイントの使用を商品券などと同様に支払の手段として処理しており、軽減税率導入後のレシート表記に対応して値引額を合理的に区分記載するには、システム改修が必要になるということです
 

◆平成30年5月に国税庁が見解

これまで、ポイントの使用について国税庁が正式に見解を示したものはなかったですが、平成30年5月に公表した「収益認識基準による場合の取扱いの例」のケース1では、「自社ポイント」を使用した場合の消費税の取扱いが次のように示されています。

すなわち、「自社ポイント」の使用は売上に係る対価の返還等、つまり“値引き”に当たるとしました。

「収益認識基準による場合の取扱いの例」は、収益認識会計基準の創設を踏まえて公表されたものです。しかし、この「自社ポイント」の使用が“値引き”に当たるとの見解は、同基準の創設を踏まえて従来からの考え方を変えたものではないとのことです。

従って、同基準の適用の有無に関わらず、中小企業を含めた全ての企業に適用されることになります。

 

◆POSレジの改修が必要に

この点、対応が必要になるのが小売業界です。

10月からの導入が予定されている軽減税率制度では、標準税率対象(10%)と軽減税率対象(8%)が混在する取引に対して一括“値引き”を行う場合、値引額を税率ごとに合理的に区分し、レシートに記載しなければならないからです(軽減税率制度Q&A(個)問99、インボイス制度Q&A問45)。

以下の通り、“値引き”の方法については、値引額を適用税率ごとの価格の比率により按分し、それぞれの価額から値引くだけでなく、標準税率対象(10%)と軽減税率対象(8%)のいずれかのみから値引くことも認められます。

平成31年(2019年)10月1日から区分記載請求書等保存方式が導入されることにより、飲食料品と飲食料品以外のものを同時に販売し、割引券等の利用により一括して値引きを行った場合、適用税率ごとに区分した“値引き後の税込対価の額”等をレシートに記載しなければならないことになります。

値引き後の対価の額は、値引き前の対価の額等により按分するなど合理的に算出する必要があります。

この点、実務上は値引きの対象を“飲食料品”又は“飲食料品以外のもの”に限定することも可能です。値引きの対象を絞ることで、適用税率ごとの値引額等の按分計算は避けられます。

 

通達及びQ&Aで示された一括値引きへの対応

軽減税率対象商品(8%)と標準税率対象商品(10%)が混在する取引に対し一括値引きを行った場合の対応について、軽減税率制度に関する取扱通達15・軽減税率制度Q&A(個別事例編)問69・問88で主に以下の考え方が示されています。

[A] 事業者が、軽減対象資産の譲渡等とそれ以外の資産の譲渡等を同時に行った場合には、それぞれの資産の譲渡等ごとに適用税率を判定する。

[B] 軽減対象資産とそれ以外の資産を同時に譲渡し、割引券等の利用により、その合計額から一括して値引きを行う場合、適用税率ごとに区分した値引後の対価の額に対してそれぞれ消費税が課される。

[C] 例えば、顧客が割引券等を利用したことにより、同時に行った資産の譲渡等を対象として一括して対価の額の値引きが行われており、適用税率ごとの値引額又は値引き後の対価の額が明らかでないときは、割引券等による値引額を当該資産の譲渡等に係る価額の比率により按分し、適用税率ごとの値引額及び値引き後の対価の額を区分する。

[D] 顧客へ交付する領収書等により適用税率ごとの値引額又は値引き後の対価の額が確認できるときは、値引額等が適用税率ごとに合理的に区分されているものに該当する。

[E] レシート等には適用税率ごとに区分した値引き後の対価の額を明らかにする必要がある。

 

値引き対象商品の限定も一案

例えば、飲食料品と飲食料品以外のものを合わせて販売した際に「お買い上げ総額から500円OFF」のクーポン券が使用された場合、値引額である500円を値引き前の対価の額等により按分したうえで、適用税率ごとに値引き後の対価の額を算出・レシート等に記載することになります(パターン1)

値引額等の按分計算は前記[C]の飲食料品と飲食料品以外のものの合計額から一括値引きを行う場合で値引額、値引き後の対価の額が明らかでないときに要されるものです。

また、前記[D]で適用税率ごとの値引額、値引後の対価の額が確認できれば、値引額、値引後の対価の額が合理的に区分されているものに該当するとしています。値引きの対象をいずれかの税率対象商品に限定し、値引額と値引後の対価の額を確認できるようにしておけば、合理的に区分されているといえるとのことです。例えば、値引きを飲食料品以外のものに限ることで按分計算は避けられることになります(パターン2)


 

(図は、税務通信記事「平成31年(2019年)10月1日付」から引用

                                                                   

しかし、いずれにしてもシステム対応が必要になるといいます。現行のPOSレジは、「自社ポイント」の使用を商品券等の金券と同様に支払の手段として処理しているからです。

この点、ある企業がPOSレジのベンダーに問い合わせたところ、「自社ポイント」の使用を“値引き”として税率ごとに区分することは想定していない旨の認識を示したという情報もあります。

「自社ポイント」を支払の手段としている現行の処理を改め、“値引き”として税率ごとに区分して処理するためには、各社が、個別にシステム改修を行う必要があると考えられるため留意が必要です。

 

≪他社ポイント、加盟店での使用は消費税の“値引き”に当たらず≫自社ポイントのようにPOSレジの改修は必要なし。軽減税率制度導入に伴うレシート表記への対応は不要

他社ポイントが加盟店で使用された場合は、その加盟店における売上の“値引き”には該当せず、レシート表記への対応も不要ということです。

 

◆他社ポイントの使用は“値引き”に該当せず

自社ポイントの使用については、国税庁が昨年5月に公表した「収益認識基準による場合の取扱いの例」のケース1で明らかにされた通り、売上に係る対価の返還等、つまり消費税法上の“値引き”に当たります。

このため、軽減税率制度の導入に対応し、POSレジの改修が必要なケースも出てきます。

この点、「他社ポイント」の使用でも同様の問題が生じることが懸念されますが、「他社ポイント」が加盟店で使用された場合、その加盟店における売上の“値引き”には該当しないとのことです。

【例】

第三者であるX社が運営するプログラム(100円で1ポイント付与、1ポイントを加盟店の1円の商品と交換できる)にY社とZ社が加盟店として参加しているケースを考える(顧客へのポイント付与に応じてポイント相当額をポイント運営会社に支払い、加盟店でポイントが使用された際に精算金が支払われる)。

顧客が加盟店Yで10800円(税込)の商品を購入。ポイント運営会社Xから108ポイントを付与された顧客が、今度は加盟店Zにおいて、その付与されたポイントを108円(税込)の商品の購入に使用したとする。

この取引は、仮に、加盟店Zで使われたのがZの自社ポイントであれば、ポイントの使用は“値引き”に該当する。

しかし、これが「他社ポイント」の場合、“値引き”には当たらない。ポイントで支払われた分については、ポイント運営会社Xから精算金が支払われるからだ。

このため、加盟店Zでは、例えば税抜き経理方式であれば、課税売上100円、仮受消費税8円を計上することになる。

 

◆POSレジの改修は不要

そして、加盟店における「他社ポイント」の使用は、“値引き”には当たらないため、軽減税率制度の導入に伴うレシート表記への対応も不要となります。

商品券などと同様、これまで通りレシートに支払の手段として表記すればよく、POSレジの改修は必要ないということになります。

 

(追記!)2019.6.26更新

『【飲食料品取扱い業者向け】消費税軽減税率の徹底総解説!』のページを作成しております。

飲食料品に絡む軽減税率に係る取扱いを、総合的にまとめていますので、事業をされている方も、そうでない方も、確認用にご利用いただければと思います。

 

最後に

この記事を読んで肥田木会計事務所のことが気になった方は、何かあった時にでも思い出してください。

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