
「宗教法人は税金がかからない」と思われることがあります。
たしかに、宗教法人の場合、すべての収入に法人税が課税されるわけではありません。しかし、宗教法人であっても、収益事業を行っている場合には、その収益事業から生じた所得に対して法人税が課税されます。
また、消費税については、法人税の「収益事業」に当たるかどうかとは別に、対価性のある資産の譲渡等に当たるかどうかで判断する必要があります。
宗教法人そのものはもちろん、宗教法人と取引を行う事業者にとっても、基本的な課税関係を理解しておくことが大切です。
| 対象 | 理由 |
|---|---|
| 宗教法人(寺院・神社・教会等) | 収益事業を行う場合、法人税の課税関係が生じるため |
| 宗教法人と取引のある事業者 | 消費税の課税取引かどうかの確認が必要になるため |
| 宗教法人の会計・税務に関わる方 | 収益事業と非収益事業の区分経理が必要になるため |
宗教法人などの公益法人等については、すべての所得に法人税が課税されるわけではありません。法人税が課税されるのは、収益事業から生じた所得のみです。
収益事業に該当するには、次の2つの要件をいずれも満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 継続要件 | 各事業年度の全期間を通じて、継続して事業活動を行うもの |
| 事業場要件 | 継続して事業場を設けて行われるもの(常時店舗・事業所等の拠点となる一定の場所を設けて行う事業。移動販売・移動演劇興行等も含む) |
宗教法人については、収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課税されるため、収益事業に係る経理と、収益事業以外の事業から生じる所得に関する経理は、区分して行う必要があります。
収益事業とそれ以外の事業に共通して発生する費用については、継続的に、使用面積割合や従業員数割合などの合理的な基準によって配賦して経理することになります。
宗教法人が収益事業を行っていない場合でも、一定の場合には書類の提出義務があります。
その事業年度の収入金額(施設収入等を含む。ただし資産の売却による収入など一時的なものを除く)の合計額が8,000万円を超える場合には、事業年度終了の日の翌日から4か月以内に、損益計算書または収支計算書を所轄税務署長に提出する必要があります。
| 事業・行為 | 法人税上の取扱い | 内容・備考 |
|---|---|---|
| お守り・おふだ・おみくじ等の頒布 | 収益事業に該当しない場合がある | 売価と仕入原価との関係から、実質的な喜捨金と認められる場合 |
| 絵はがき・写真帳・暦・線香・ろうそく等の販売 | 収益事業に該当 | 一般の物品販売業者が販売しているような物品を通常の販売価格で販売する場合 |
| 縁香・やろうそく・供花等の販売 | 収益事業に該当しない | 専ら参詣に当たって神前・仏前等に捧げるものとして |
| 墓地の貸付け | 収益事業に該当しない | 永代使用料として一定金額を一括徴収するものも含む |
| 墓地以外の不動産貸付け | 原則として収益事業に該当 | 不動産貸付業として取り扱われる |
| 所蔵品等の展示 | 収益事業に該当しない | 宗教法人が所蔵している物品または普管の委託を受けたものを、常設の宝物殿等において観覧させる行為(法基通15-1-52) |
| 駐車場の経営 | 収益事業に該当 | 不特定または多数の参拝者に時間極め等で随時駐車させる場合や、月極等で相当期間にわたって継続して同一人に駐車場所を提供する場合 |
| 結婚式場の経営 | 一部が収益事業に該当 | 挙式行為で本来の宗教活動の一部と認められるものは該当しないが、挙式後の披露宴の席貸し・飲食物の提供・衣装貸付け・記念写真撮影などは該当 |
| 固定資産の譲渡 | 原則として収益事業の付随行為 | 収益事業の用に供していた固定資産の売却による収益は課税対象。ただし、おおむね10年以上保有していたものは収益事業に含めないこともできる |
| 収益事業から生じた所得の運用 | 原則として収益事業の付随行為 | 収益事業以外の事業に属する資産として区分経理した場合は課税対象に含めないこともできる |
消費税については、宗教法人も通常の事業者と同様に課税事業者となり得ます。
重要なのは、消費税の課税対象になるかどうかは、法人税上の収益事業に該当するかどうかでは判断しないという点です。消費税では、その行為が対価性のある資産の譲渡等に当たるかどうかによって判断します。
| 取引・行為 | 消費税の取扱い | 備考 |
|---|---|---|
| 寄付や贈与による金品の受領 | 課税対象外 | 相手方に対して資産の譲渡、資産の貸付け又は役務の提供を行い、その反対給付として金品などを受領するものではないため、消費税の課税対象とはならない |
| 土地の貸付け・幼稚園の授業料(保育料)・入園料・入園検定定員料・給食費・教育設備費等 | 非課税取引 | 消費税法上、非課税取引として消費税は課税されない(消費税法別表第二、同法第6条第1項) |
| 宝物館等への入場料 | 課税取引 | 消費税法上は非課税と特に規定されていないため、消費税の課税対象となり、料金等への転嫁により消費者に消費税分の負担を求めることになる |
① 法人税と消費税の判断基準は別物 お守り等の頒布は、法人税上は収益事業に該当しない場合がありますが、消費税上は課税対象となります。この2つを混同しないことが最も重要なポイントです。
② 収入8,000万円超なら提出義務の確認を 収益事業を行っていなくても、収入金額の合計額が8,000万円を超える場合には、損益計算書または収支計算書の提出義務があります。
③ 駐車場・不動産貸付け・結婚式場は収益事業に該当しやすい これらは収益事業に該当しやすく、法人税上の課税対象となり得ます。事業の実態に応じて慎重に確認する必要があります。
宗教法人は、すべての収入に法人税が課税されるわけではありません。しかし、収益事業を行っている場合には、その収益事業から生じた所得に対して法人税が課税されます。
また、消費税については、法人税上の収益事業かどうかではなく、対価性のある資産の譲渡等に当たるかどうかによって判断します。
宗教法人の税務では、収益事業に該当するかどうか、区分経理ができているか、消費税の課税対象となる取引かどうかを分けて確認することが大切です。
参照:『会計・監査ジャーナル』Vol.38 No.850 2026年5月号(日本公認会計士協会機関誌)税務《連載》租税相談Q&A 402「概説『宗教法人課税』」小畑孝雄 著(p.54)