社会保険料・退職金共済掛金・労働保険料の費用にできる時期の整理 税のお役立ち情報

会社が負担する社会保険料、退職金共済掛金、労働保険料は、いずれも「保険料」や「掛金」として経理されるものです。

しかし、税務上の損金算入時期は、それぞれ同じではありません。

未払いでも損金算入できるものもあれば、実際に納付しなければ損金算入できないものもあります。また、申告書を提出した日が基準になるものもあります。

決算時には、種類ごとの取扱いを正しく確認することが大切です。

記事のポイント

社会保険料、退職金共済掛金、労働保険料は、損金算入のタイミングが異なります。

種類損金算入の基本的な考え方
社会保険料法人負担分は、計算対象月の末日が属する事業年度で損金算入
退職金共済掛金等現実に納付・払込みをした日の属する事業年度で損金算入
労働保険料概算保険料は、申告書提出日または納付日の属する事業年度で損金算入

同じ「保険料」でも、未払計上できるかどうかが異なる点が重要です。

社会保険料は、法人負担分について未払計上が可能

健康保険料や厚生年金保険料など、法人が納付する社会保険料については、そのうち法人負担分が損金算入の対象になります。

法人負担分については、その保険料等の計算対象となった月の末日が属する事業年度に損金算入するとされています。

つまり、実際の納付が決算日後になっていても、計算対象月の末日が当期中であれば、法人負担分は未払金として損金処理することができます。

未払計上が認められる理由は、社会保険料が毎月末日に納付義務の確定する性質のものであること、そして一種の公租公課であり、納付しない場合には国税徴収の例により滞納処分が行われることにあります。この点が、後述する退職金共済掛金等との大きな違いです。

一方、従業員負担分は会社の損金にはなりませんので立替金等として経理することになります。

退職金共済掛金等は、未払計上できない

退職金共済掛金等については、社会保険料とは取扱いが異なります。

退職金共済掛金等については、現実に納付または払込みをした日の属する事業年度で損金算入するとされています。

したがって、未払いの期間があったとしても、その期間に係る部分を未払金として損金算入することはできません。

その理由は、これらの掛金等は社会保険料のように滞納処分を受けるものではなく、未納の場合には単に契約解除になるだけであり、未払金計上になじまない性質のものだからです。

社会保険料は未払計上できる一方で、退職金共済掛金等は実際に納付・払込みをしていなければ損金算入できません。同じ「掛金」でも、性質の違いによって取扱いが変わります。

延滞金は、確定分について未払計上できる

延滞金は、納付遅延に係る利息やペナルティの性質があるものですが、税務上は損金算入されます(損金不算入となる租税公課には列挙されていません)。

そのため、延滞金については、その確定分について未払金計上も可能とされています。

労働保険料は、申告書提出日または納付日が基準

労働保険料(雇用保険および労災保険)については、社会保険料や退職金共済掛金等とはまた異なる取扱いになります。

労働保険料は、保険年度(4月1日〜3月31日)の期首から50日以内に概算保険料を申告納付し、保険年度終了後に確定保険料との差額を精算する仕組みです。

法人負担分については、次のように整理されます(従業員負担分は立替金処理)。

区分損金・益金算入の時期
概算保険料申告書を提出した日、または納付した日の属する事業年度の損金
確定保険料の不足額(概算<確定)申告書を提出した日、または納付した日の属する事業年度の損金。ただし、事業年度末以前に終了した保険年度に係る不足額は、申告書提出前でも未払計上が可能
確定保険料の超過額(概算>確定)申告書を提出した日の属する事業年度の益金

なお、確定保険料の申告により還付が生じる場合、その益金算入時期は、還付金が入金された時ではなく、確定分の申告書提出日となります。入金日と混同しやすいポイントですので注意が必要です。

実務上の確認ポイント

① 社会保険料の未払計上漏れがないか確認する 健康保険料・厚生年金保険料の法人負担分は、計算対象月の末日を基準に未払計上できます。資金繰りで支払いが遅れていても、損金算入できることに留意しましょう。

② 退職金共済掛金等を未払計上していないか確認する 社会保険料と混同して未払計上すると、税務調査で否認されるリスクがあります。実際に納付・払込みをした事業年度でのみ損金算入できます。

③ 労働保険料の還付は「入金日」ではなく「申告書提出日」が益金 還付金が口座に入金されてから益金処理しがちですが、正しくは確定保険料の申告書を提出した日が基準です。事業年度をまたいで処理がずれないよう注意しましょう。

まとめ

社会保険料、退職金共済掛金等、労働保険料は、いずれも会社に関係する保険料・掛金ですが、税務上の取扱いは同じではありません。

  • 社会保険料の法人負担分は、計算対象月の末日が属する事業年度で損金算入できます。
  • 退職金共済掛金等は、現実に納付・払込みをした日の属する事業年度で損金算入します。
  • 労働保険料は、申告書提出日または納付日を基準に処理します。

同じ「保険料」でも、損金算入時期は種類ごとに異なります。決算時には、それぞれの性質に応じて、未払計上できるものとできないものを区別することが大切です。

参照:『調査事例からみた税務判断のポイントと対応策 平成25年2月改訂』(税理士 岸田光正 著、清文社)第18章 保険料関係 18-1・18-2