「月次決算を知らずに経営はできない」 経営者が会計を味方にするために 税のお役立ち情報

「会計のことは経理や会計事務所に任せている」という経営者の方は少なくありません。しかし、月次決算の数字は、経営者が会社を正しい方向に導くための最重要情報です。その数字を他人任せにすることは、会社の将来を左右する判断を他人に委ねているのと同じかもしれません。

月次決算は「経営管理のための会計」

月次決算は、制度会計ではなく、経営管理手法としての会計です。定まったルールや様式があるわけではなく、大切なのは会社の実態をできるだけ早く・正しく把握し、経営判断に役立てることです。

月次決算の目的としては、作成する立場から見ると、次のようなものがあります。

  • 会計情報を迅速に提供する
  • 予算の達成度合いを把握する
  • 年度決算の予測に役立てる
  • 年度決算作成の時間短縮を可能にする

ただし、これらはあくまで作成者側から見た形式的な目的です。

本来の目的は、右側の「利用する立場」にあります。月次決算は、経営者が会社の状況を正しく理解し、望ましい経営施策を判断するためのものなのです。

経営者にこそ、会計知識が必要

月次決算で使われる会計知識は経営者に必須です。月次決算報告者が的確に報告しても、経営者が理解できなければ、経営に活かすことはできません

また、会計の知識は「上から下へ」と浸透していきます。経営者が会計に詳しくなれば、現場を指揮する幹部も詳しくなり、会社全体で数字に強い組織ができていきます。その結果、会社は次第に”赤字になりにくく、資金繰りに困らない「負けない会社」”になっていきます。

反対に、経営者が会計を知らなければ、会計数値による説明や報告が求められず、目標指示もされないため、部下も会計を知らないままで済んでしまいます。

会社の将来が大事であるなら、会計への関心を強め、会計知識を深める努力を怠るべきではありません。

月次決算には「楽しむ」という目的もある

月次決算には、副次的な目的もあります。それは会社の利益が増え、財務力が頑強になっていくことを楽しむことです。

これはダイエットに例えることができます。思うように体重が減っていけば、体重計に乗ることが楽しみになります。同じように、会社の利益が増え、借入金の返済が順調に進み、預金残高が積み上がっていくのを確認することは、励みにもなります。

反対に、数字を怖がって確認を避けると、改善のチャンスを逃してしまいます。数値が思うようにならない場合でも、原因は分かっているはずです。

  • ダイエットの場合:食べ過ぎ・飲み過ぎ
  • 月次決算の場合:過剰なコストや投資

原因が分かれば、対策が打てます。まず数字と向き合うことが、会社を守ることにつながります。

月次損益計算書は「説明しやすい形」に整える

月次決算の説明力を高めるために、会計ソフトから出力される試算表をそのまま使うのではなく、エクセルなどの表計算ソフトにデータを入れ直すことが推奨されています。情報を網羅することよりも、重要な説明ポイントを絞ることが大切だからです。

特に有効なのが前年同月との比較です。季節要因や稼働日数などその月特有の事情を考慮した分析が可能になり、毎月の推移だけでは気づきにくい小さな変化も、前年同月と比較することではっきりと見えてきます。

また、当期純利益の下に累計利益と進捗度を表示することで、年度着地の見通しを把握できます。たとえば前期最終利益が170,000千円であった場合、今月次の累計利益73,002千円は進捗度43%(=73,002÷170,000)となり、年度の着地点が具体的にイメージできるようになります。

まとめ

月次決算は、単なる経理資料ではありません。会社の利益を維持・成長させ、財政を安定・強化するために、経営者へ正しい情報をいち早く届けるためのものです。

経営者が会計に関心を持ち、月次の数字を理解することで、会社は少しずつ「負けない会社」に近づいていきます。

まずは毎月の数字を見ること。そしてその数字から会社の現状を知り、必要な対策を考えること。月次決算を経営に活かすことが、会社を強くする第一歩です。

参照:『実践理解 経理、総務、経営企画部門担当者のための月次決算書の見方・説明の仕方 第3版』(公認会計士 和田正次 著、税務研究会出版局)