【製造業向け節税】収用を好機と機械配置を合理化、移設費用は修繕費へ! 税のお役立ち情報

 

製造業の方々においては、工場用地の収用が行われた時に、このチャンスを活かし、収用地の工場に設置されていた機械を他の工場に移し、より集中生産できるような体制にされる会社も多いのではないでしょうか。

では、この時の移設費用は全額経費処理できるかそれとも機械装置として固定資産に計上すべきかとの疑問の声もいただきます。

そこで、『収用の際の機械移設費用の取扱い』について、下記で解説させていただきます。

 

まず、修繕費とされる費用の確認

 

これについては、法令ではなく通達ですが、法人税法基本通達7-8-2に、以下の通りに定められています。

(修繕費に含まれる費用)基通7―8―2 

法人がその有する固定資産の修理,改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため,又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となるのであるが,次に掲げるような金額は,修繕費に該当する。

(2) 機械装置の移設(7―3―12⦅集中生産を行う等のための機械装置の移設費⦆の本文の適用のある移設を除く。)に要した費用(解体費を含む。)の額

 *本事例に関係のある箇所のみ抜粋

                                                                   

一瞬、機械の移設費用は全部修繕費にできるかと思いきや、緑字の箇所の、『7―3―12⦅集中生産を行う等のための機械装置の移設費⦆の本文の適用のある移設を除く。』という記載が気になります。

そこで、該当通達にも目を通してみます。

 

『集中生産を行う等のための機械装置の移設費』の取扱いの確認

通達の取扱いでは、下記のようになっています。

(集中生産を行う等のための機械装置の移設費)基通7―3―12 

集中生産又はよりよい立地条件において生産を行う等のため一の事業場の機械装置を他の事業場に移設した場合又はガスタンク,鍛圧プレス等多額の据付費を要する機械装置を移設した場合(措置法第65条の2⦅収用換地等の場合の所得の特別控除⦆に規定する収用換地等に伴い移設した場合を除く。)には,運賃,据付費等その移設に要した費用(解体費を除く。以下7―3―12において「移設費」という。)の額はその機械装置(当該機械装置に係る資本的支出を含む。以下7―3―12において同じ。)の取得価額に算入し,当該機械装置の移設直前の帳簿価額のうちに含まれている据付費(以下7―3―12において「旧据付費」という。)に相当する金額は,損金の額に算入する。

この場合において,その移設費の額の合計額が当該機械装置の移設直前の帳簿価額の10%に相当する金額以下であるときは,旧据付費に相当する金額を損金の額に算入しないで,当該移設費の額をその移設をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。

(注)主として新規の生産設備の導入に伴つて行う既存の生産設備の配置換えのためにする移設は,原則として集中生産又はよりよい立地条件において生産を行う等のための移設には当らない。

*見やすいように、括弧書き内は色を変えています。

                                                                   

今度は一瞬、集中生産を目的とした効率的な配置のための機械の移設費用は、機械装置として固定資産計上しなくてはいけないと思ってしまいます。

しかし、今度は赤字箇所の『収用換地等に伴い移設した場合を除く』という記載が出てきます。

そこで、赤字箇所の記載の意味が大事になってきます。

 

「収用換地等に伴い移設した場合を除く」の意味とは

 

たとえ集中生産等のための移設であっても、その移設が公共事業の施行に伴つて移設を余儀なくされたというような場合には、法人の意思にかかわらないものです。

これを通常の集中生産等の場合と同様に取扱うと、妥当ではなくなります。

特に公共事業の施行に伴う移設の場合には、その移設に要する費用に充てるために補償金が交付されるのが普通であるから、そのこととの関連においても、単純にその移設費を資本的支出として取扱い、固定資産に計上させることは妥当とは言えないのです。

そこで、この通達においては、収用換地等に伴つて機械装置の移設が行われた場合には、その内容がたとえ集中生産や立地条件の改善又はガスタンク,鍛圧プレス等の移設に該当する場合であつても、その移設費を修繕費等として単純に損金処理ができることを明らかにしているのです。

 

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