経営力向上計画と中小企業経営強化税制の活用実務ガイド 税のお役立ち情報

2026年度(令和8年度)を迎え、中小企業の皆様が事業拡大や効率化を目指す際、実務的な助けとなるのが「経営力向上計画」の認定制度です。この計画が認定されることで、税制、金融、法的支援といった多面的な優遇措置を受けることが可能になります。

本記事では、制度の仕組みと、活用の際に留意すべき実務上のポイントを整理して解説します。

1. 経営力向上計画の役割

経営力向上計画は、人材育成、コスト管理、設備投資などを通じて、自社の経営力を向上させるための行動計画です。申請書は、企業の概要、現状認識、目標、具体的な取組内容などを記載する3枚程度の構成であり、認定を受けやすい設計となっています。

  • 税制上の利点:認定計画に基づき取得した設備について、法人税の優遇措置や不動産取得税の軽減が受けられます。
  • 資金調達の円滑化:政策金融機関による低利融資や、民間融資に対する信用保証の別枠確保などの支援があります。
  • 法的保護:事業承継時における許認可手続きの簡略化などの特例措置が適用されます。

2. 税制上の優遇措置:即時償却と税額控除

「中小企業経営強化税制」は、認定された計画に基づき設備を新規取得して事業の用に供した場合に適用されます。以下のいずれかを選択できる点が実務上の大きな特徴です。

措置の内容概要
即時償却取得価額の全額を、取得した事業年度に一括して損金(経費)算入できる。
税額控除取得価額の10%(資本金3,000万円超の法人は7%)を、法人税額から直接差し引く。

3. 実務担当者が意識すべき「取得価額」と「単位」

参考書籍:『経営力向上計画 中小企業投資促進税制・経営強化税制の実務』(橋本満男 著/大蔵財務協会)より引用・要約

  • 判定の単位:単品ごとの取得価額は、法人税法基本通達7-1-11に定める単位、すなわち、通常1単位として取引される単位ごとに判定します。
  • 付随費用の計上:取得価額は、資産の購入代価に、外部および内部の付随費用を加えた額です。たとえば、機械装置の設置に不可欠な「専用の基礎工事」の費用も取得価額に算入されます。
  • ソフトウェアの改修:プログラムの修正・改良等で既存ソフトウェアの仕様が大幅に変更され、新たなソフトウェアを製作したと同様に認められる場合は、新たなソフトウェアの取得として本制度が適用されます。
  • ファイナンスリース:所有権移転外リース取引については、税額控除のみ利用可能(即時償却は不可)であり、控除額は毎年のリース料ではなく「リース資産額」をベースに計算します。

4. 業種・目的別の適用に関する実務的知識

参考書籍:『経営力向上計画 中小企業投資促進税制・経営強化税制の実務』(橋本満男 著/大蔵財務協会)より引用・要約

医療保健業と調剤薬局

医療保健業を行う事業者が取得する医療機器などは原則として対象外ですが、調剤薬局は「小売業」に分類されるため、医療保健業を行う事業者には該当せず、本制度を利用できます。

目標未達成時の扱い

計画で掲げた目標(労働生産性の伸び率等)が達成できなかったとしても、それをもって認定が取り消されることはありません。また、適用された税制措置の「取戻し規定」も存在しません。ただし、計画に従って事業が行われていない場合には認定が取り消されることがあります。

5. 手続きのタイミングとスケジュール

原則:計画の認定を受けてから設備を取得する

例外として、設備取得後であっても60日以内に申請書が受理(到達)されれば認められます。ただし、この場合でも、「当該事業年度内(決算日まで)」に計画の認定を完了させていなければ、その年度の税制措置を受けることはできません。

 

参考文献

  • 経営力向上計画策定の手引き
  • 税制措置・金融支援活用の手引き
  • 橋本満男『経営力向上計画 中小企業投資促進税制・経営強化税制の実務』