
東京国税局は、人工衛星打上げ輸送サービスに係る消費税の取扱いについて事前照会回答を公表しました。国内の射場から宇宙空間の軌道へ人工衛星を輸送するサービスが、輸出免税の対象となることが明確化されました。
事業者が顧客から依頼を受け、ロケットによって人工衛星を国内の射場から宇宙空間の所定軌道に投入するサービスを提供する場合の消費税の取扱いについて照会がなされました。
このサービスには、ロケットの準備、人工衛星との接続調整、打上げ実施、そして軌道投入までの一連の業務が含まれています。
特徴的なのは契約内容です。このサービスでは、第一次意図的点火(ロケットの点火)の発出時点でサービスが完了したとみなされ、打上げの成否にかかわらず同額の対価が支払われます。
ただし、当事者間の合意では「人工衛星を宇宙空間の所定軌道に投入すること」を目的としており、再打上げ可能な場合は失敗とみなされません。これらから、本サービスは人工衛星の輸送契約として評価されます。
東京国税局は、以下の3つの理由から輸出免税が適用されるとの見解を示しました。
契約当事者が「人工衛星の宇宙空間への輸送」を目的として合意しており、ロケット打上げ作業自体を目的とするものではありません。したがって、本サービスは消費税法上の「貨物の輸送」に該当します。
消費税法における「国内」とは、日本の主権が及ぶ領土・領海・領空を指します。
一方、宇宙条約において、宇宙空間は主権の主張、使用若しくは占拠等によって国家による取得の対象とならないと定められています。この宇宙条約の規定により、宇宙空間には国家の主権が及ばないため、消費税法上の「国内以外の地域」に該当すると判断されました。
本サービスは、国内の射場を出発地とし、宇宙空間(国内以外の地域)を到着地とする人工衛星の輸送です。したがって、「国内及び国内以外の地域にわたって行われる貨物の輸送」に該当し、輸出免税が適用されます。
この回答により、宇宙ビジネス分野における消費税の取扱いが明確になりました。人工衛星打上げサービスを提供する事業者は、適切に輸出免税を適用することで、消費税負担の軽減が可能となります。
今後、宇宙産業の成長に伴い、このような新しい取引形態に対する税務上の解釈が重要性を増していくと考えられます。
宇宙空間が「国内以外の地域」であるという解釈、そして人工衛星打上げサービスが「貨物の輸送」に該当するという判断は、今後の宇宙ビジネスにおける重要な指針となります。
宇宙ビジネスに関する消費税や、新しいビジネスモデルの税務処理についてご不明な点がございましたら、HIDAKI-KAIKEIまでお気軽にご相談ください。
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出典:東京国税局事前照会回答「人工衛星打上げ輸送サービスに係る消費税の取扱いについて」
