【年末調整】通勤手当の非課税限度額が引き上げに ― 令和7年分の年末調整での対応に注意 ― 税のお役立ち情報

 はじめに

令和7年11月19日、所得税法施行令の一部改正が公布されました。
これにより、自動車やバイク、自転車などの「交通用具」で通勤する従業員に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられました。

今回の改正は、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当遡って適用されます。
つまり、年末調整の段階で「精算」が必要になるケースが発生します。

マイカー通勤が一般的な地方企業では実務への影響が大きく、早めの対応が重要です。

 背景:人事院勧告から始まった通勤手当見直し

この改正は、**令和7年8月7日の「人事院勧告」**が発端です。
公務員の通勤手当の額が引き上げられることを受け、民間にも同様の調整が行われる流れとなりました。

国税庁は、11月に以下のような発表を行っています。

「令和7年11月19日に所得税法施行令の一部を改正する政令が公布され、通勤のため自動車などの交通用具を使用している給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられました。」
(出典:国税庁『通勤手当の非課税限度額の改正について』令和7年11月)

この改正は、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に適用されます。
すなわち、年末調整での調整処理が必要となる可能性があります。

 改正内容のポイント

▶ 改正後の非課税限度額(自動車・自転車通勤)

通勤距離(片道)改正前改正後(R7.4.1以後)増加額
2km未満全額課税同左
2km以上10km未満4,200円同左
10km以上15km未満7,100円7,300円+200円
15km以上25km未満12,900円13,500円+600円
25km以上35km未満18,700円19,700円+1,000円
35km以上45km未満24,400円25,900円+1,500円
45km以上55km未満28,000円32,300円+4,300円
55km以上31,600円38,700円+7,100円

(出典:税務通信2025年11月24日号)

距離区分は従来のままですが、非課税限度額が大幅に引き上げられています。
特に、片道45km以上通勤する従業員がいる企業では影響が大きい改正です。

 実務での注意点

『税務通信』(2025年11月24日号)は次のように注意を呼びかけています。

「4月以後に支払われるべき通勤手当に遡り適用されるため、改正前の非課税限度額を超えて通勤手当を支給しており過納となる税額がある場合には、年末調整で精算が必要となる。」

実務上の対応ポイント:

4月以降の支給分の再確認
 課税していた通勤手当のうち、改正後の限度内となる部分は年末調整で精算します。

中途退職者の修正対応
 新たに非課税となる金額がある場合には、既に交付した源泉徴収票を再交付する対応をとることになります。

中途入社者の対応
 中途入社した従業員がいる場合で、前職で課税された通勤手当がある際には、改正後の非課税限度額に基づき前職の会社から再交付された源泉徴収票の提出を受け必要があります。

差額を「追加支給」する場合の扱い
 4月分に遡って差額を支給する場合、合計が改正後限度内であれば全額非課税となります。

地方企業のようにマイカー通勤者が多い職場では、精算ミスや源泉票再交付の手間を防ぐため、今のうちに通勤手当支給履歴を整理することが肝要です。

 今後の見通し

今回の改正は平成26年以来11年ぶり
ただし、これで終わりではありません。

『税務通信』(2025年11月24日号)によると、

「令和8年4月1日から、65㎞以上100㎞以上の区分(5㎞刻み)の新設(上限66,400円)や、駐車場利用に対する通勤手当(上限5,000円)の新設が予定されている。」

とされています。

つまり、令和8年以降も通勤手当の制度見直しが続く可能性があり、
給与規程や勤怠・給与システムを毎年見直す必要が出てきます。

肥田木会計からのメッセージ

今回の通勤手当改正は「数字の更新」で終わらず、
年末調整・源泉票再交付・給与規程変更まで広く影響を及ぼします。

肥田木会計では、
・年末調整のサポート
・規程改訂の文面整備
など、実務に即した運用支援を行っています。

「どこまでが非課税?」「どこを修正すべき?」といった疑問がある方は、
お気軽にご相談ください。

税理士法人HIDAKI-KAIKEI
宮崎県都城市若葉町45-4-2
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