【簡易課税】消費税では、自動車修理整備業は何業か?(裁決例より) 税のお役立ち情報

 

消費税については、原則課税以外に簡易課税という計算方法がある。

簡易課税制度は、『売上げに係る消費税額』を基礎として『仕入れに係る消費税額』を算出することができる制度だ。

具体的には、前々事業年度における課税売上高が5,000万円以下であれば、売上げに係る消費税額に、事業の種類の区分に応じて定められたみなし仕入率を乗じて算出した金額を「仕入れに係る消費税額」として、売上げに係る消費税額から控除することができる。

事業区分及びみなし仕入率は、次のとおりとなる。

第1種事業(卸売業):90%

第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る)):80%

第3種事業(農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業):70%

第4種事業(第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業及び第6種事業以外の事業):60%

第5種事業(運輸通信業、金融業及び保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く)):50%

第6種事業(不動産業):40%

消費税計算において、みなし仕入率が大きい業種ほど、同じ売上でも納める消費税が小さくなる。

 

事業区分の考え方

簡易課税制度上の事業区分は、第1種事業及び第2種事業については、消費税法施行令第57条第6項でその範囲が規定されている。

消費税法施行令 第五十七条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)

 前項第一号の卸売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業をいうものとし、同項第二号の小売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で同項第一号に掲げる事業以外のものをいうものとする。

なお、第3種事業、第5種事業及び第6種事業については業種を列挙しているのみであり、さらには第4種事業については「前各号に掲げる事業以外の事業をいう。」とし、その業種にどんな事業が属するかを規定していない。

そこで、消費税法基本通達13-2-4が第3種事業第5種事業及び第6種事業の範囲について、おおむね日本標準産業分類「大分類」に掲げる分類を基礎として判定する旨を定めている。

しかし、実際の経済社会は多種多様な業態があり、この会社の事業がどの業種に該当するか悩み、時として税務調査官と言い争いが起きることもある。

過去に、『自動車整備業』が「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」に該当するので第4種事業か、日本標準産業分類の分類を基礎として判定して第5種事業(サービス業)かが争われた裁決例があるので紹介する。

 

本裁決の要旨

日本標準産業分類は日本の産業に関する統計の正確性と客観性を保持し、統計の相互比較と利用度の向上を図るために、統計調査の産業表章の基準の一つとして設定されたものであり、その分類は客観的なもので、簡易課税制度の公平性を重視する観点から、日本標準産業分類を基礎として事業区分を判定することは、他に普遍性を有する合理的な基準が見当たらない以上、合理的と認められることから、当該取扱いについては、当審判所においても相当と認められる。

審査請求人の営む自動車の販売並びに整備及び修理に係る事業の内、自動車の整備及び修理に係る事業(本件事業)がいずれの事業に該当するかを判定すると、本件事業は、日本標準産業分類【大分類Q-サービス業】〈中分類-自動車整備業〉に分類されるところから、日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定すると第5事業に該当することとなる

審査請求人は、本件事業は第4事業となる旨主張するが、それは請求人の独自の解釈であり、消費税法施行令第57条の規定からみて、到底採用することはできない。

(平成11年7月1日~平成13年6月30日各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成15年6月12日裁決(非公開))

 

解説

本事例において会社側は、下記の消費税法施行令を援用して、自動車整備業は「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」であり、第4種事業に該当すると主張したと思われる。

消費税法施行令 第五十七条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)

 前各項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

三 第三種事業 次に掲げる事業(前二号に掲げる事業に該当するもの及び加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業を除く。)をいう。

イ 農業

ロ 林業

ハ 漁業

ニ 鉱業

ホ 建設業

ヘ 製造業(製造した棚卸資産を小売する事業を含む。)

ト 電気業、ガス業、熱供給業及び水道業

消費税法基本通達13-2-7 (加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供の意義)

令第57条第5項第3号《事業の種類》に規定する「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」とは、13-2-4本文の規定により判定した結果、製造業等に該当することとなる事業に係るもののうち、対価たる料金の名称のいかんを問わず、他の者の原料若しくは材料又は製品等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供又はこれに類する役務の提供をいう。

なお、当該役務の提供を行う事業は第四種事業に該当することとなる。

しかし、事業者の営む事業が同産業分類の大分類によって判定した結果、製造業等に該当する事業であっても、「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」に該当するときには、第3種事業から除かれ第4種事業に該当することとされるとしているのみにすぎない。

つまり、「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」なので第4事業に該当すると主張するためには、まず標準産業分類上第3種事業となる製造業等に該当することが前提となる。

したがって、自動車修理業などのように「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」に該当すると考えられる事業であっても、これらの事業は第3種事業に該当する製造業等に該当するものではなく、そもそも日本標準産業分類の大分類において、サービス業等に該当するものだから、簡易課税制度における事業区分は第5種事業に該当することになる、という判断になる。