役員に対する賞与は、事前確定届出給与(事前に税務署に届出をして支払う賞与)などに該当しない限り損金算入できない。企業側で比較的容易にコントロールできる役員賞与を利用して、決算前に利益調整することをできないようにするためだ。
しかし、その役員が「使用人兼務役員」であれば、役員でありながら使用人部分の賞与については、賞与の支給が可能となる(不相当に高額な部分を除き、原則、損金算入できるということ)。
ここで注意が必要なのは、法人税法上の使用人兼務役員になれる者は限定されていることだ。
法人税法上の使用人兼務役員とは、取締役等の役員(社長、理事長等除く)のうち、
①部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有すること、
②常時使用人としての職務に従事すること、
の2点を満たすものである。
①の対象となるのは、部長、課長のほかに、支店長、工場長、営業所長など法人の機構上定められている使用人たる職務上の地位を有しているものである。
一方、法人の“特定の部門の職務を統括している”ものは除かれる(法人税法基本通達9-2-5 )。除外されるものとして、本部長、事業部長などが挙げられ、例えば、総務・経理・人事等のバックオフィス事務全般を統括する立場にある『取締役総務人事本部長』は使用人兼務役員に該当しない。
仮に、役職名が本部長ではなく部長であったとしても、“特定の部門の職務を統括している” 実態が伴う場合は、役職名にかかわらず使用人兼務役員に該当しないことになる。
例えば、複数の営業所をまとめる立場にある『取締役営業部長』は、“特定の部門の職務を統括している”として使用人兼務役員に該当しない。
一方、小規模法人については、その事業内容が家内工業的に単純なもので、しかも使用人が少数であるため、部長、課長等の職制上の地位を定めていない場合も少なくない。
このような場合に、使用人としての職制上の地位がないからおよそ使用人兼務役員を認めないというのも実態に即しないことになるので、そのような小規模法人のヒラ取締役が常時他の使用人と同質の職務に従事しているときは、使用人兼務役員とすることも認めている(法人税法基本通達9-2-5 )。
使用人部分の賞与を損金算入するには、他の使用人への賞与と同時期に支給することが必要だ。
ここでいう同時期とは、必ずしも同日である必要はなく、数日のズレがあってもよいとのこと。