取引先の作業員等にPCR検査を受けさせた場合、費用は全額損金可能か⁉ 税のお役立ち情報

 

新型コロナウイルスの感染拡大が依然深刻な状況となっており、企業においては徹底した感染対策とともに安心・安全な職場環境の整備が責務となっている。

とある建設現場では一作業所に様々な業種の作業員等が出入りするため、従業員や取引先(下請等)の作業員等に対しPCR検査の実施を義務付け、陰性確認がとれた者のみ勤務を認めているとのことだ。

では、自社の従業員及び取引先の作業員等に対して定期的にPCR検査を受けさせ、検査費用を自社が負担した場合、「全額損金算入できるのか」、それとも「寄附金又は交際費等に該当するのか」という疑問も生じてくると思う。

そこで、本疑問に対して、『税務通信』に取扱いが示されていたので、一部要約および追記した上で、紹介していく。

 

検査は自社の業務遂行上必要なものか

自社が、取引先(下請等)の作業員等がPCR検査を受けた際の検査費用の一部又は全額を負担した場合、税務上は取引先に対する寄附金又は交際費等と取り扱うのが一般的と考えられる。

本来、取引先が負担すべき費用を自社が負担したといえるためだ。

◆寄附金とは(法法37⑦)

寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をいう。

◆交際費等とは(措法61の4④)

交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。

ただ、自社の業務を安心・安全、確実に遂行するために従業員及び取引先(下請等)に対して契約条件としてPCR検査を義務付け、自社の要請のもと検査が行われた場合、その検査は自社自身の業務のために行われたものといえる。

したがって、取引先の作業員等に係る検査費用も含めて自社の業務遂行上必要な費用に該当する。この場合の自社が負担した取引先の作業員等に係る検査費用相当額は、取引先に対する寄附金又は交際費等には当たらず、全額損金できる、という取扱いになる。

 

取引先への資金援助目的や便宜供与目的は寄附金又は交際費等

他方で、取引関係においてPCR検査の実施は“推奨”レベルであり取引先の判断により検査が実施されたものの、検査費用が高額であることなどから資金援助や便宜供与を目的として検査費用相当額を自社が負担するケースも考えられる。

このような場合の検査は、自社自身の業務遂行上必要なものとは言えない。

本来、取引先が負担すべき費用であることから自社が負担した検査費用相当額は寄附金の額又は交際費等の額に該当することになる。

 

新型ウイルス感染症の発生を受け取引先従業員に対して行う見舞金

PCR検査とは直接関係ないがさらに付け加えると、新型コロナウイルス感染症に関連する売上の減少等により資金繰りが困難となっている下請企業に対する支援として、「その従業員等に対し見舞金品を支出するために要する費用」についても、租税特別措置法の通達で担保されている。

つまり、新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定の適用を受ける新型インフルエンザ等(新型コロナウイルス感染症も含まれる。)が発生し、入国制限や外出自粛の要請など自己の責めに帰すことのできない事情が生じたことにより、売上の減少等に伴い資金繰りが困難となった下請企業に対する支援として、その従業員等に対し見舞金品を支出した場合も、災害による被災者に対する支援に係る取扱いと同様に取り扱い、寄附金や交際費等に該当せず全額損金算入できる、としている。