個人事業を法人化するタイミングについて、税金面からお答えします。 税のお役立ち情報

 

無料相談を受けた際によくある相談で、「個人で事業をしているのだが、いつごろ法人化すれば有利なのか?」という相談をよく受ける。

そこで、今回は税金に着目した上で、どのタイミングで法人化を検討すればいいのかの一定の目安を紹介したいと思う。

 

法人と個人では税率構造が違う

法人税と個人所得税は税率構造が異なる。

現在の税制では、法人は2段階のみの定率課税。個人は所得税と住民税あわせると7段階の累進課税ということになる。

そして、個人所得税の最小税率は所得税・住民税あわせて15%、法人税の最小税率は事業税をあわせて概ね30%くらいだ。

この税率構造の違いからだけでも、まずは「所得が少ないうちは個人事業。所得が大きくなってきたら法人のほうが有利」であることは想像がつくと思う。

 

法人であるが故のデメリット

もちろん、法人化することはデメリットもある。

一つは、「均等割」という赤字でも黒字でもかかる地方税の金額が個人よりもはるかに高い。従業員50人以下で資本金1000万円以下の場合、都道府県と市町村分をあわせて年間7万円だ。

この他に、個人の場合にはとくに制約のない交際費についても、年間800万円以上は全額損金不算入となる。

また、個人の場合、正規の簿記の原則に従った帳簿を作成した場合、65万円の青色申告特別控除が認められるが、法人にはそのような恩典はない。

それ以外にも、税務調査の頻度も間違いなく多くなる。個人だと10年に1回ぐらいしかない税務調査の頻度が、法人化によって3 年から5年に一度の調査になることも考えられる。

資本金が1億円以下の場合。資本金が1億円を超えると交際費は原則全額損金不算入となる。

 

法人のほうが得になる所得はどれくらい?

家族構成によって所得控除額は大きく変わる。他に所得のある場合もあるだろう。そのため、 一概には言えないが、だいたいの目安が下記の書籍で示されているので、その一文を紹介する。(本書は少し古い書籍だが、今でも十分に参考になる良書である)

 

はじめての「独立・起業」なるほど成功ガイド

 

『一人で事業を行っているのであれば、だいたい「事業所得が400万円くらいになれば、法人化を検討してもよい」だろう。』

 

具体的な根拠は示されていないが、推測するにそのくらいの事業所得になると法人にかかる税率と個人にかかる税率がだいたい同じくらいになり、法人化して役員報酬を払うと給与所得控除を受けることができるので、合理的な提示と思われる。

よって、税金面だけ考える場合、事業所得が400万円~500万円くらいになってくれば、法人化を検討してもいいと考えている。