契約書上は月払い。でも1年分払って全額費用計上できる?【短期前払費用】 税のお役立ち情報

 

法人税の通達には、1年以内の短期の前払費用について、いわゆる期間対応による繰延経理をせずに、その支払時点で損金算入することを認めるものがある。

このような短期の前払費用の処理は、企業会計上は重要性の原則に基づく経理処理ということであるが、税務上の考え方も同様の立場に立っていると理解してよいであろう。

シンプルな考え方ではあるが、実務ではこの通達の適用にあたって疑問が生じる時がある。

その疑問の一つとして、契約書に「月払い」と記載されているのに、実際の支払方法として「年払い」をした場合、本通達を使用できるか、という点がある。

本疑問について、参考になる記事が税務通信に記載があったため、簡単に紹介する。

 

【短期前払費用】契約上の支払方法は問わず(継続適用を要件に一括で損金算入できる場合も)

年間サービスの利用料等を一括で支払うことにより、短期前払費用の特例(法基通2-2-14)を適用し、その支払額の全額を損金算入することは、実務上、多く行われている。

たとえば3月決算の会社が、毎年3月下旬に翌期分(4月から翌年3月分)の家賃1年分を前払いにより支払うような時が該当する。

ただし、同特例は、利益調整を目的とした適用を排除するため、厳格な要件が付されている。

ところが上記通達を見てみても、『契約』で「年払い(一括払い)」と明示することは要件とされていない。つまり、たとえ契約上の定めが「月払い」などとされている場合でも、実際の支払方法が「年払い(一括払い)」であれば、その他の要件を充足することで同特例の適用対象になるということのようだ。

 

実は、『契約』で支払方法を明示することは求められていない

法人が支払う前払費用は、支払時に資産計上し、役務提供の期間に応じて損金算入することが原則だが、支払日から1年以内に受ける役務提供に係る費用については、短期前払費用として、その支払日の属する事業年度に一括で損金算入することが認められる。その支払額を継続して支払日の属する事業年度に損金算入していることが要件の一つだ。

この点、短期前払費用の前提となる前払費用は、“一定の契約”に基づく費用であることは必要だが(上記通達の下線箇所参照)、契約上、その支払方法を明示することまでは求められていないものと考えられる。

 

実際の支払方法が年払いなら同特例の適用対象に

また、同特例は、会計上の「重要性の原則(重要性の乏しいものは本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることを認める旨の原則)」に基づく処理を、税務上も認めたものである。

そのため、契約上の支払方法を問わず、実際の支払方法が「年払い(一括払い)」であり、会計上も前払費用として処理しているのであれば、同特例の適用対象として問題ないとのこと。

 

でも、利益調整目的の適用はダメ

ただし、前述のとおり、同特例は、その支払額を継続して支払日の属する事業年度に損金算入していることが要件の一つである。

契約上の定めが「月払い」であるにもかかわらず、利益調整を目的に、その事業年度のみ、支払方法を「年払い(一括払い)」とした場合等では、同特例の適用対象外となる。