コロナ対策で、常備用としてマスクやアルコールを大量に購入した上で、在庫として保管されている事業者様は多いです。
常識的な感覚で考えると、これらは購入した時に当然、税務上費用にできると考えると思います。
しかし、面倒なことに税務上は在庫があるものについては原則、棚卸資産として計上しなくてはいけない(=費用化できない)という取扱いがあるので、意外とすぐに費用化できるか迷ったりします。
ここで税務通信でちょうどいい事例が載っていましたので、一部抜粋で紹介します。
医療機関や飲食店、スーパー等不特定多数の顧客を相手にする企業は、新型コロナウイルス感染防止のため従業員にマスクを支給する例は多くみられます。
従業員に支給するマスクは、「消耗品で貯蔵中のもの」に該当し棚卸資産として管理し、現に使用したときに、その購入費用を損金算入するというのが建前かもしれません。
しかし、マスクは新型コロナウイルス感染防止のため備蓄することに意義がありますから、その購入時に使用したものとして、その購入費用は、購入時に一時損金算入をしてよいものと考えます。常備するマスクは、医療機関の新型コロナウイルス患者の受入れのため、待機をしている医療設備等と同様の状態にあるといえましょう。また、非常用食料品の購入費用は、購入(備蓄)時に使用したものとして、購入時に一括損金算入してよい、という先例もあります。
【消費税の取扱い】
棚卸資産は、期末在庫になっているかどうかにかかわらず、その購入したときに取得価額の全額を仕入税額控除の対象にします。
新型コロナウイルスの感染予防のため、マスクに限らず、消毒液や医療用ガウン、手袋、フェースシールド、マウスシールド、透明シート、アクリル板などを備蓄・用意する医療機関、飲食店、ホテル等は少なくありません。
これらの消耗品の中には、マスクと異なり、透明シート、アクリル板のように、やや耐久性を有するものもありますが、上記(1)のマスクと同様に取り扱ってよいものと考えます。これらの物品も、常備することに意義があります。
もし、透明シートやアクリル板は「消耗品」ではないとすれば、次項(3)の少額減価償却資産として損金算入を行います。これらの物品は、コロナ禍に対処するため準備するものですから、いつでも使用できるように常備したときに、事業の用の供したとみて、その取得価額全額を損金算入してよいものと考えます。
新型コロナウイルス感染予防のための体温感知器(サーモグラフィー)、検温カメラ、空気清浄機等、テレワークのためのパソコン、タブレット端末、ルーター、机、椅子、飲食デリバリーや通勤・営業外回りのための電動自転車などを用意する企業が多くみられます。
この場合、購入するこれらの資産が、単体でその機能を発揮することができる限り、1台、1基又は1個当たりの取得価額が10万円未満であれば、減価償却をすることなく、事業供用時にその取得価額全額を損金算入することができます。これらの資産を大量に取得し、その総額が多額になったとしても、少額重要資産制度(その事業に必要不可欠な重要資産は少額であっても資産計上すること)や総額制限等はありませんから、その総額を損金算入して差し支えありません。
ただし、中小企業者等の取得価額が30万円未満の減価償却資産の取得価額の一時損金算入にあっては、総額300万円までに限られます。
【消費税の取扱い】
少額減価償却資産の取得費用について、減価償却をするか、一時損金算入するかを問わず、全てその取得をしたときに仕入税額控除の対象にします。
参考:関係法令・通達等
(1) 中小企業者や協同組合,銀行,保険会社等は,その有する金銭債権の貸倒れによる損失の見込額について,①一括評価貸倒引当金又は②個別評価貸倒引当金勘定に繰り入れた場合,法定の繰入限度額までの金額について損金算入ができる( 法法52 )。
(2) 法人の有する金銭債権について,①債権の切捨てによる法律的な債権の消滅が生じた場合( 法基通9-6-1 ),②債務者の資産状況,支払能力等からみる回収不能による経済的な債権の消滅が生じた場合( 法基通9-6-2 ),③取引停止後弁済がないことによる特例事由が生じた場合( 法基通9-6-3 )には,その金銭債権につき貸倒損失の計上ができる。
(3) 法人が,災害を受けた取引先に対してその復旧を支援する目的で災害発生後相当の期間内に売掛金,未収請負金,貸付金等の債権の全部又は一部を免除した場合には,その免除損失は寄附金の額に該当せず,従前の取引条件を変更する場合も同様に取り扱う( 法基通9-4-6の2 ,前記「Ⅸ寄附金」2(7),3(1)参照( №3634 ))。
(4) 法人が,その子会社等の解散,経営権の譲渡等に伴い,その子会社のために債務の引受け,債権放棄等(損失負担等)をした場合,その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることが明らかであるため,やむを得ずその損失負担等をするに至ったこと等,そのことに相当の理由があるときは,その損失負担等は寄附金に該当しない( 法基通9-4-1 )。
(5) 法人が,その子会社に対して債権放棄をした場合,その債権放棄が,例えば業績不振の子会社の倒産防止のために,合理的な再建計画に基づきやむを得ず行われるものである等,その債権放棄に相当な理由があるときは,子会社に供与する経済的利益は寄附金に該当しない( 法基通9-4-2 )。