意図的なグループ法人税制逃れは、否認の可能性あり(裁決例より) 税のお役立ち情報

 

グループ法人税制は、100%支配グループ内の法人取引について強制適用されるもので、「グループ内法人間の資産譲渡損益の繰延べ」「中小法人向け特例措置の適用制限」等といった、実務的に少し煩わしい取扱いがあります。

しかし、だからといって意図的にグループ法人税制を逃れるためだけに不合理な取引をすると、税務調査で否認されるリスクは高いです。参考となる裁決例がありますので、紹介させていただきます。

 

裁決のポイント

請求人が行った従業員1名に対する第三者割当増資は、グループ法人税制の繰延制度の導入によりA社との不動産取引による固定資産売却損の損金算入が認められなくなることを回避するために行われたもので、経済的、実質的見地において純粋経済人として不合理・不自然な行為であるといわざるを得ないとして、法人税法第132条《同族会社の行為計算否認》第1項が適用された事例です。

(平成28年1月6日裁決)

 

主な争点

本件割当増資が、法人税法第132条第1項に規定する「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるか否か。

 

裁決の要旨

請求人は、平成22年度税制改正において導入されたグループ法人税制の繰延制度の施行により、A社との間に完全支配関係を有したままでは、同制度の施行前に認められていた請求人・A社間の不動産取引による固定資産売却損の損金算入が認められなくなることから、請求人・A社間の完全支配関係を解消して同制度の適用を免れる目的で、本件割当増資を行ったものと認められる。

請求人が、本件割当増資に当たり、経済的合理性の観点から、その財産状況や経営状態等を具体的に検討ないし勘案した形跡はうかがわれない。また、請求人は、約1,000名の従業員を擁する中で、本件割当増資において割当ての対象者としたのは、総務経理部長として第三者割当増資による繰延制度の適用回避に向けた立案、検討に深く関与した総務経理部長Pただ一人であり、同人以外の従業員に対しては、割当増資の後も含め、一切割当てを行っておらず、そもそも募集の周知すらしていない。

これらの諸点に鑑みれば、本件割当増資は、経済的、実質的見地において純粋経済人として不合理・不自然な行為であるといわざるを得ず、法人税法第132条第1項に規定する「不当」な行為であると認めるのが相当である。

 

本事案から学べること

「問題となる取引」をその同族会社が実行することについて相応の経済的合理性があるかどうかを慎重に検証しておくことが必要です。

 

【お約束事項】

本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。

当サイトのコンテンツの正確性の確保に努めてはおりますが、提供している情報に関して、いかなる保証もするものではありません。

当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。