【節税】リース契約でも「中小企業経営強化税制」を使える⁉ 税のお役立ち情報

 

リース契約で取得した特別な資産について、税制上の優遇措置が使えないかのお問い合わせをよくいただきます(主に、製造業や建設業から)。

そこで、今回は節税効果の高い「中小企業経営強化税制」について、リースでも利用できるのかについて解説していきます。

 

そもそも「中小企業経営強化税制」とは?

「中小企業経営強化税制」とは、中小企業者等が、指定期間内に、特定経営設備等取得等をして、これを国内にあるその中小企業者等の営む指定事業の用に供した場合には、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、その特定経営力向上設備等の取得価額から普通償除した金額に相当する金額の特別償却(即時償却)又は特定経営力向上設備等の取得価額の10 % (中小企業者等のうち資本金の額額が3,000万円超の法人は7 % )相当額の税額控除ができるというものです。

 

適用上の事前手続

本制度では、 工業会証明書の取得 ( A類型) や、 投資計画に関する経済産業局の確認 ( B類型) に加え、 中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定が必要となり ます。 工業会証明書等のみでは税制優遇の適用が受けられませんから、留意が必要です。

 

ではリースにより導入した資産に「中小企業経営強化税制」を適用できるか?

『所有権移転リース取引』の場合は、特別償却または税額控除が選択適用できます。また、『所有権移転外リース取引』の場合は、税額控除のみが適用できます

 

1.税務上のリース取引はリース資産の引渡しの時に売買があったものとされる

法人が税務上のリース取引(①中途解約の禁止と②フルペイアウトの要件を満たすリース取引)を行った場合には、リース資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時にそのリース資産の売買があったものとして、その賃貸人及び賃借人である法人の各事業年度の所得の金額の計算を行うこととされています。

したかって、税務上のリース取引を行った場合には、そのリース資産は売買により賃借人において取得したものと扱われます。

ところで、本制度における「取得等」は「取得(その製作又は建設の後事業の用に供されたことのないものの取得に限る。)または製作 もしくは建設をいい、リース取引による取得を除いていません(ただし、所有権移転外リース取引による取得については特別償却の適用において除外:措法42の12の4 ⑥参照)から、リース取引により取得した特定経営力向上設備等についても、所定の要件を満たす限り本制度の適用対象資産となります。

 

2.所有権移転外リース取引は、通常の資産の売買と同様の取引とは認められない

リース取引には、『所有権移転リース取引』と『所有権移転外リース取引』がありますが、『所有権移転リース取引=(①所有権移転条項付リース取引、②割安購入選択権付リース取引、③特別仕様資産対象リース取引、④リース期間短縮リース取引及び⑤これらに準ずるリース取引)』は、実質的に通常の資産の売買と同様の取引と認められ、資産の所有権も賃借人に移っていると見ることができます。

これに対し、『所有権移転リース取引=(所有権移転リース取引以外のリース取引)』は、通常の資産の売買と同様の取引とは認められないと考えられます。

 

3.所有権移転外リース取引は、税額控除のみが適用できる

そこで、税務上のリース取引に該当するリース取引で特定経営力向上設備等を賃借した法人は、そのリース取引が『所有権移転リース取引』に該当する場合にはリース資産に対する特別償却(即時償却)又は税額控除の選択適用ができますが、『所有権移転リース取引』に該当する場合には税額控除のみが適用でき、特別償却(即時償却)は適用できない取扱いとなっています。

(この取扱いは、本制度のほか、例えば中小企業投資促進税制や業・サービス業・農林水産業活性化税制など租税特別措置法の他の定による特別償却や圧縮記帳においても同様となっています。)

 

リース資産の取得価額の求め方

リース資産の取得価額は、リース期間に支払うべきリース料の合計額に付随費用を加えた額になります。

 

リースにより取得した資産の取得価額は、リース料の合計額に事業の用に供するために支出する付随費用の額を加算した額となる

リース取引により取得したリース資産の取得価額は、①原則としてそのリース期間に支払うべきリース料の合計額に、②そのリース資産を事業の用に供するために賃借人が支出する付随費用の額を加算した額となります。

ただし、①については、リース料の合計額のうち利息相当額から成る部分の金額を合理的に区分することができる場合には、そのリース料の合計額から利息相当額を控除した金額とすることができます。また、②の付随費用には、リース資産の設置等に当たり支出する据付費や運送費等の額が含まれます。

 

毎月リース料で経理処理している場合はどうなるか?

所有権移転外リース取引も含め、税務上のリース取引により賃借した特定経営力向上設備等については、賃貸借(リース料)処理した場合であっても税額控除は適用できます。

 

税務上のリース取引により取得した特定経営力向上設備等については、会計上リース料処理していても税額控除ができる

会計上、リース料総額が300万円以下のリース取引など個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合又は中小企業には、リース取引の賃借人の会計処理は賃貸借処理、つまりリース資産として固定資産に計上するのではなく、リース料支払いの都度、支払いリース料を費用処理することが認められています。

ただ、会計上、賃貸借(費用)処理した場合であっても、税務上のリース取引はリース資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時にそのリース資産の売買があったものとして、その賃貸人及び賃借人である法人の各事業年度の所得の金額の計算を行うとともに、「賃借人がリース料として損金経理をした金額は、償却費として損金経理をした金額に含まれる。」ものとされています。

これらのことから、税務上のリース取引(所有権移転リース取引及び所有権移転外リース取引)により賃借人が取得したものとされるリース資産(特定経営力向上設備等)については、本制度の税額控除が適用できるところ、そのリース資産は売買により取得したものとされ、そのことは仮に、会計上支払の都度、リース料で経理処理する賃貸借(費用) 処理しているため資産としての計上がない場合であっても変わるものではありません。つまり、税務上はリース資産をリース期間定額法等で減価償却していると扱われます。

したがって、その機械に係るリース取引につきそのリース料を賃貸借(費用)処理しているために会計上に資産として計上されていなくても、税額控除は可能と考えられ、その場合の税額控除限度額は、取得価額(リース料総額に、リース資産の設置等に当たり貴社が支出した付随費用の額を加算した額)に10 %又は7 %を乗じた金額相当額となります。

 

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