いわゆる節税保険を封じる改正法人税基本通達の内容も確定しました。
そこで、結局、保険料の税務処理はどのように変わるのかを、国税庁が令和元年7月8日に公表した『定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ』も参考にしながら、簡潔に解説していこうと思います。
今回の改正では、
①最高解約返戻率50%超の定期保険等について、保険料の一部を資産計上することが原則となりました。
また、
②短期払のがん保険等については、年間の支払保険料30万円以下であることが、支払日の属する事業年度での損金算入が認められる要件の一つとなりました。
『改正通達の適用時期』は下表のとおりとなっています。
なお、FAQでは、適用日前の契約に係る定期保険等の保険料は、適用日以後に契約内容の変更があった場合でも、改正前の取扱いが適用されること等が示されています(Q1、13より)。
改正通達の適用時期 | |
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①定期保険又は第三分野保険(最高解約返戻率50%超の定期保険等) | 令和元年7月8日以後契約分 |
②解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険(短期払のがん保険等) | 令和元年10月8日以後契約分 |
ピーク時の解約返戻率(最高解約返戻率)が50%超の法人向け保険は、保険料の一部を資産計上することが原則となります。
また、最高解約返戻率85%超の定期保険等は、原則の資産計上期間経過後であっても、「解約返戻金相当額」が高額なものについては、資産計上期間が継続することになっています(法基通9-3-5の2)。
FAQでは、ここでいう「解約返戻金相当額」は、各保険商品のパンフレット等に記載された金額ではなく、保険設計書等に記載される個々の契約内容に応じて設定される金額であることを示しています(Q4より)。
また、いわゆる変額保険は、契約時に示された予定利率を用いて計算した「解約返戻金相当額」、外貨建て保険は、契約時の為替レートを用いて計算した「解約返戻金相当額」を用いて差し支えないことなどを示しています(Q8より)。
このほか、保険料を年払としている場合、法人税基本通達2-2-14〈短期の前払費用〉により損金算入した金額を当期分支払保険料とできるとしている(Q2より)。
今後、年間の支払保険料30万円 超 の「短期払のがん保険等」については、保険料の払込期間終了後であっても、保険期間の経過に応じて保険料を損金算入する必要があります。
ただし、「解約返戻金のない短期払の定期保険又は第三分野保険」の保険料については、年間の支払保険料30万円 以下を要件に、支払日の損金算入が認められます。
なお、「解約返戻金のない短期払の定期保険又は第三分野保険」には、「ごく少額の払戻金のある契約」も含まれることになっています(法基通9-3-5(注)2)。
「ごく少額の払戻金」の範囲について、現行の商品では、入院給付金日額などの基本給付金額(5,000円~1万円程度)の10倍としている商品が多いため、こうした払戻金は、一般的にはごく少額のものと考えられるとし、ごく少額か否かは、支払保険料の額や保障に係る給付金の額に対する割合などを勘案して個別に判断するとしています(Q16より)。
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