税務・会計トピックス

【会計士が解説】新社会福祉法人制度、あらためて総復習できるページを作成しました

 

 

平成29年4月1日に、新社会福祉法が施行され、はやくも1年ちょっと経過しました。

まだまだ、全ての法人の実務に完全に定着したとは言えない新社会福祉法ですが、あらためて実務に携わる方々が新社会福祉法人制度を総ざらいできるように、総復習ページを作成してみました。

 

新社会福祉法人制度とは

1.制度見直しの基本的視点

社会福祉法人は、社会福祉を目的とする旧民法34条の公益法人の特別法人として制度化されました。当初より、各種の規制等により高い公益性と非営利性を担保された法人でしたが、福祉ニーズが多様化・複雑化する中で、福祉サービスの中心的担い手としてあり続けるためには、その運営組織等において、在り方を見直さなければならないとされました。その際に、公益財団法人等と同様の公益性・非営利性を確保する必要があると結論づけられました。

 

また、福祉サービスは、多様な事業主体より提供されるようになりました。社会福祉法人は、極めて高い税制上の恩恵を受けることから、公益法人以外の他の事業主体より適正な運営を担保することが求められます。一部の社会福祉法人による不適正な運営のため、社会福祉法人全体に対する信頼が揺らいでいることもあることから、経営組織の強化運営の透明性財務規律の確立を図り、社会福祉法人のあるべき姿について国民に対する説明責任を果たすために制度化が急務とされました。

 

2.経営組織の在り方の見直し

平成26年に閣議決定された規制改革実施計画では、以下の点について決定されました。

① 社会福祉法人の内部管理を強化するために、理事会や評議員会、役員等の役割や権限、責任の範囲等を明確に定める。

② 一定の事業規模を超える社会福祉法人については、外部機関による会計監査を義務付ける。

 

旧社会福祉法における経営組織は、社会福祉法人制度発足当初のものであり、今日の公益法人に求められる内部統制の機能を果たせる仕組みにはなっていません。そのため、平成18年の公益法人制度改革での、一般社団法人・財団法人法(以下、「法人法」という。)の機関設計を参考にガバナンスの強化が図られました。

 

3.運営の透明性の確保

平成26年に閣議決定された規制改革実施計画では、以下の点について決定されました。

① 補助金や社会貢献活動に係る支出額の公表

② 役員の区分ごとの役員報酬等の総額(役員報酬以外の職員としての給与を含む。)の公表

③ 親族や特別の利害関係を有する者との取引内容の公表

 

4.適正かつ公正な支出管理

社会福祉法人は、「適正かつ公正な支出管理」について、社会的要請にこたえる義務があります。

そのため、特に、「役員報酬の決定」「関係者への特別の利益供与禁止」及び「会計監査人設置を含む外部監査」について、重点的に議論されました。

 

(1) 役員報酬等の決定

役員報酬等については、理事会の議決を経て理事長が定める現行の取扱いを改め、定款の定め又は評議員会の決議により決定する必要があるとされました。また役員報酬等は、不当に高額にならないように法人がその支給基準を定め、公表する必要があると結論づけられました。この場合、役員等の区分ごとの報酬総額を公表するとともに、個別の役員等の報酬額が勤務実態に即したものであるか確認する観点から、所轄庁への報告事項とすることとされました。

 

当該報酬額は、職員給与や職員賞与として支給される分を含む点に、特に留意する必要があります。

 

(2) 関係者への特別の利益供与禁止

関係者への特別の利益供与禁止では、関連当事者との取引内容の情報開示について、現況報告書及び現行の社会福祉法人会計基準における財務諸表の注記事項において開示の対象となる関連当事者の範囲について、以下の要件を付け加えることが必要であるとされました。

 

【注記事項において開示の対象となる関連当事者の範囲】

ⅰ 当該社会福祉法人を支配する法人若しくは当該社会福祉法人によって支配される法人又は同一の支配法人をもつ法人

ⅱ 当該社会福祉法人の評議員及びその近親者

 

(3) 会計監査人設置を含む外部監査

一定規模以上の社会福祉法人については、ガバナンスの強化、財務規律の確立の観点から、会計監査人による監査を法律上義務付ける必要があると議論されました。また、会計監査人の設置義務の必要のない社会福祉法人についても、定款で定めるところにより、会計監査人を置くことができるようにする必要があるとされました。

 

さらに、会計監査人の設置義務の対象とならない法人には、所轄庁による監査の効率化を進めるという観点から、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人による財務会計に係る態勢整備状況の点検等や監事への公認会計士又は税理士の登用を指導することとされました。

 

5.地域における公益的な取組の責務

社会福祉法人は、規制改革実施計画での議論を踏まえて、営利企業等では実施することが難しく、市場で安定的・継続的に供給することが望めないサービスを供給することが求められるとされました。つまり、新しい社会福祉法では、日常生活・社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額の料金により福祉サービスの提供を社会福祉法人の責務として位置付けることが必要であると議論されました。さらに今後は、地域における公益的な取組を責務とするに当たり、措置費や保育の運営費の使途制限を見直すほか、本部経費についての弾力的な運用についても検討されることとなりました。

 

6.内部留保の明確化と福祉サービスへの再投下

社会福祉法人の収支差額の累積額である内部留保の在り方については、その実態を明らかにし、適正な活用を促す仕組みにはなっていませんでした。

 

そのため、規制改革実施計画では、内部留保の位置付けを明確にし、福祉サービスへの再投下や社会貢献での活用を促すことが必要であるとされました。具体的には、内部留保の実態を明らかにし、現在の事業継続に必要な財産以外に活用できる財産を保有している場合には、社会福祉法人の趣旨・目的に従い、これを計画的に福祉サービス(社会福祉事業又は公益事業により供給されるサービス)に再投下し、地域に還元することが求められると議論されました。

 

さらに、再投下可能な財産額に係る計画については、公認会計士又は税理士の確認書を付して所轄庁の承認を得ることが必要であるとされました。

 

7.行政の役割と関与の在り方

行政は、社会福祉法人の運営に関して関与すべき範囲を明確にして重点的に監査を行うとともに、専門性を有する分野等においては、外部の機関等を積極的に活用することにより、全体として指導監督の機能強化を図ることが必要であるとされました。また、以下の要件を満たす法人については、定期監査の実施周期の延長や監査項目の重点化等を行う仕組みを導入することが適当であると議論されました。

 

【監査が簡略化等される法人】

ⅰ 社会福祉法人改革に即したガバナンスや運営の透明性の確保、財務規律の確立等に適切に対応している法人

ⅱ 財務諸表や現況報告書のほか、会計監査人が作成する会計監査報告書及び「運営協議会」の議事録を提出して、所轄庁による審査の結果、適切な組織運営・会計処理の実施や地域等の意見を踏まえた法人運営が行われている法人

 

8.社会福祉施設職員等退職手当共済制度の見直し

社会福祉施設職員等退職手当共済制度は、社会福祉施設等に従事する人材を確保し、福祉サービスの安定的供給の質の向上に資することを目的とした制度となります。当該共済制度の給付水準については、民間との均衡を考慮しつつ、職員の定着に資するよう長期加入に配慮したものが適切であることから、国家公務員退職手当制度に準拠した支給乗率にするとともに、その際、既加入職員の期待利益を保護する観点から、適切な経過措置を講ずることが必要であるとされました。

 

また、公費助成については、介護保険関係施設・事業において公費助成が廃止されていることや他経営主体とのイコールフッティングの観点などから、公費助成を見直す議論が行われました。

 

社会福祉法適用に向けて準備された事項

新しい社会福祉法は、事業の決定、経営組織等及び会計処理方法について、会社法や法人法を準用して構成されています。そのため、新社会福祉法の全体像を捉えた上で、役員等の人選を行い、法と整合性のある定款や諸規程を整備する必要がありました。

 

1.事業の決定

新社会福祉法では、経営の原則が改正され、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で福祉サービスを積極的に提供するよう努めなくてはならないこととされました。さらに、毎会計年度において一定の財産残額がある場合には、既存事業の充実や新たな社会福祉事業等の実施が義務づけられました。これらの事業決定については、理事会での決議を通じて、評議員会の承認を受けなければなりません。

 

さらに、この事業計画は、その事業費等について、公認会計士又は税理士等の意見を聴かなければならないこととなりました。そのため、業務執行の実行可能性を担保する事業の決定と役員等の選任が必要となります。

 

2.経営組織体制等の見直し

新社会福祉法の役員等は、会社法や法人法をベースに構成されています。そのため、従来の理事長専決の機関決定体制からの脱却を図り、役員等の報酬の決定プロセスの理解評議員や会計監査人等の外部の監視が強化されたことに、特に留意しなければなりません。

 

また、理事及び監事の人数の決定と人選及び評議員の人数の決定と人選を法人の事業実態を勘案して決定することになります。その際、役員等については、法で欠格事由や損害賠償責任に関する事項が規定されているため、その責任と権限を十分に理解した上で、経営組織体制等の見直しを図ることが必要とされています。

 

3.会計処理方法の厳格化

新社会福祉法では、社会福祉法人の会計処理方法等を厚生労働省令に委任するかたちで詳細に基準が定められます。

また、社会福祉法人会計基準には設定のない社会福祉充実計画に係る計算では、法に基づく正確な計算書類を前提として「社会福祉充実残額」を算定しなければなりません。このように、現行の社会福祉法人会計基準は、新社会福祉法の各条項を網羅していないため、今後、モデル経理規程の公表を通じて、経理規程の変更が行われました。

 

経営の原則の変更

社会福祉法人は、社会福祉事業に係る福祉サービスの供給確保の中心的な役割を果たすだけではなく、既存の制度の対象とならないサービスに対応していく必要がある法人であると解されています。そのため、社会福祉法の「経営の原則」が「経営の原則等」とされ、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならないこととなりました。

 

旧社会福祉法は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならないという条項のみの構成でした。しかしながら、地域福祉におけるイノベーションの推進は、社会福祉法人の社会的使命と解され、営利事業等では実施することが難しく、市場で安定供給が望めないサービスの提供が求められることになりました。

 

また、社会福祉法人が毎会計年度において一定の財産残額がある場合には、法人内での決議と所轄庁の承認を前提とした社会福祉充実事業を実施しなければなりません。この事業は、社会福祉事業及び一定の公益事業、地域公益事業及びその他公益事業の順で実施を検討することになります。

 

役員等に対する特別の利益供与

旧社会福祉法では、役員等に対する特別の利益供与に関する規定が存在しませんでした。しかしながら、社会福祉法の改正の趣旨の一つである経営組織の見直しの観点から、役員等に対する特別の利益供与禁止規定役員等への就任要件の制限が新設されることになりました。

 

1.特別の利益供与禁止規定

社会福祉法人は、その事業を行うに当たり、その理事、監事、評議員、職員その他の政令で定める社会福祉法人の関係者に対して特別の利益を与えてはならないこととされました。

 

2.役員等への就任要件の制限

(1) 評議員の就任要件の制限(欠格事由を除く。)

評議員は、前提として、役員又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができません。その上で、評議員のうちには、各評議員について、その配偶者又は三親等内の親族その他各評議員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が含まれてはならないことになっていま。さらに、評議員のうちには、各役員について、その配偶者又は三親等内の親族その他各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が含まれてはならないことになっています。

 

(2) 役員の就任要件の制限(欠格事由を除く。)

監事は、前提として、理事又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができません。この場合、理事と職員は兼務することができます。その上で、理事のうちには、各理事について、その配偶者又は三親等内の親族その他各理事と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が3人を超えて含まれ、又は当該理事並びにその配偶者又は三親等内の親族その他各理事と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が理事総数の3分の1を超えて含まれることになってはなりません。理事就任に係る親族等の制限については、絶対数と総数に占める割合に関する制限がありますので、特に留意する必要があります。

 

監事については、各役員について、その配偶者又は三親等内の親族その他各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が含まれてはならないことになっています。

 

会計処理の原則

社会福祉法人は、従前のとおり4月1日から3月31日をその事業年度として、厚生労働省令で定める基準に従い会計処理を行わなければなりません。

 

1.会計帳簿の作成等

社会福祉法人は、厚生労働省令で定めるところにより、正確な会計帳簿を作成しなければなりません。この会計帳簿は、閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければなりません。また、この会計帳簿等について、評議員は、社会福祉法人の業務時間内はいつでも当該書面の閲覧及び謄写の請求をすることができます。

 

2.計算書類等の作成

社会福祉法人は、毎会計年度終了後3月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、各会計年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければなりません。この場合の計算書類とは、貸借対照表及び収支計算書を指します。また、計算書類は、作成した時から10年間当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければなりません。

 

3.計算書類等の承認の流れ

社会福祉法人の計算書類等の承認の流れは、以下のようになります。

社会福祉法人の監督

社会福祉法での所轄庁の監督は、一般的監督として規定されていました。その指導検査は、行政の通知によって整備され、検査が実施されます。しかしながら、新社会福祉法では、所轄庁の監督について、報告徴収、立入検査、改善勧告及び命令という段階的な監督を行うこととされました。

 

1.社会福祉法人の監督の概要

(1) 報告徴収

社会福祉法人が定期的に提出する書類等に不備や遅延があった場合には、まず、督促後に書類等の提出がなかった法人への、今後の再発防止策について報告徴収を行うことが考えられます。

 

(2) 立入検査

(1)の報告徴収後、未だ提出がない場合等には、法人の組織・事業全般について実態を確認するために、立入検査を行うことが考えられます。

 

(3) 勧告及び公表

(2)の立入検査後、未だ提出がない場合等には、期限を定めて定期提出書類の提出等の法令違反状態の解消を勧告し、期限内に従わなかったときはその旨を公表することが考えられます。

 

(4) 命令

(3)の勧告後、未だ提出がない場合等には、法人が正当な理由なく勧告に係る措置をとらない場合にあたるものとして、当該勧告に係る措置をとるべき旨を命令することが考えられます。

 

社会福祉法人の機関設計

1.社会福祉法人の機関設計の全体像

新社会福祉法での必置機関は、評議員、評議員会、理事、理事会及び監事となります。但し、定款の定めによって会計監査人を置くこともできます。また、特定社会福祉法人(その事業の規模が政令で定める基準を超える社会福祉法人をいう。)は、会計監査人を設置しなければなりません。

 

(1)社会福祉法人の機関設計の考え方(会計監査人を除く。)

多くの社会福祉法人の機関設計は、評議員、評議員会、理事、理事会及び監事という構成になると考えられます。例えば、以下のような機関設計が考えられます。

 

【機関設計の一例】

理 事

監 事

評議員

会計監査人

6名

2名

8名

設置なし

 

(2)社会福祉法人の会計監査人の設置

会計監査人の設置を義務付ける社会福祉法人の範囲は、平成27年2月12日の社会保障審議会福祉部会報告書では、事業活動計算書のサービス活動収益が10億円以上(但し、段階的に対象範囲を拡大する予定。)又は、貸借対照表の負債が20億円以上となっておりました。この場合に政令委任される事項は、当該報告書の考え方を踏襲したと考えられます(具体的な会計監査人の設置基準は後述。)。

 

評議員の役割

旧評議員は、民法上の機関ではなく主務官庁の指導通知により設置している機関です。一方で、新しい評議員とは、定款の定めるところにより、理事の員数を超える数を置かなければならない必置機関です。

 

(1)評議員の資格

評議員は、新社会福祉法上の役員ではありませんが、次に掲げる者は、評議員になることができません。

① 法人

② 成年被後見人又は被保佐人

③ 生活保護法等又はこの法律の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者

④ ③を除くほか、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者

⑤ 所轄庁の解散命令により解散を命ぜられた社会福祉法人の解散当時の役員

 

(2)評議員の任期

評議員の任期は、原則として、選任後4年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとなります。但し、定款によって、その任期を選任後6年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで伸長することができます。この場合、評議員の任期は、単に4年や6年とすることはできません。

 

(3)評議員の要件

評議員は、社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者のうちから、定款の定めにより選任されることになります。また、評議員は、役員又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることはできません。

 

(4)社会福祉法附則による留意点

評議員は、定款の定めるところにより、「理事の員数を超える数」を置かなければならないことになっています。しかしながら、その事業規模が政令で定める基準を超えないものに対しては、法施行日から起算して3年を経過するまでの間、「理事の員数を超える数」とある部分を「4人以上」と読み替えることになります。

 

 

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